コンパッション・フォーカスト・セラピー創始者 来日記念ワークショップーエッセンシャル・スキルズ・トレーニング―
コンパッション・フォーカスト・セラピー(Compassion Focused Therapy: CFT)の創始者であるポール・ギルバート博士(Paul Gilbert, Ph.D.)による日本で初めてのワークショップでした。コンパッションの若手のホープであるジェームス・カービー博士(James Kirby, Ph.D.)とともに本邦で初めて講義をして頂きました。
ポール・ギルバート博士は、長い間認知行動療法(CBT)やその研究を行う中で、クライアントが温かく眼差しを向けながら内省していく方が治療の効果が高いことを発見しました。
これを契機に、ポール・ギルバート博士は、進化心理学、愛着理論、神経・社会・感情・認知心理学、仏教心理学の理論に基づき、CFTを発展させていきました。
CFTは、統合失調症、慢性うつ病、不安障害、PTSD、摂食障害、産後うつ、境界性人格障害等の感情調節の機能不全を抱えた精神疾患、恥意識や自己批判が高く、虐待の既往歴のあるような慢性的で、複雑な問題を抱えた方を対象にカスタマイズされています。さらには、怒りや自信など、感情やアイデンティティの問題まで幅広く適応可能であると考えられています。
CFTは、クライアントが抱える問題に対してだけではなく、セラピスト側にも多大な恩恵をもたらします。他の心理療法と競合することなく、現在の治療スタイルにコンパッションを加えることで深みと広がりを持たせる技法となっています。
慢性的で複雑な問題を抱えたクライアントに対してセラピーがうまくいかなかった経験のある方は、今回のワークショップでその理由がわかることになったでしょう。
★講師の紹介
ポール・ギルバート博士
(Paul Gilbert, Ph.D., O.B.E.)
ポール・ギルバート博士はイギリスのダービー大学の臨床心理学の教授であり、コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)の創始者である。2003年には、イギリスの行動・認知療法学会の会長を務めており、2011年には、大英帝国勲章を授与されている。イギリス心理学会の理事でもある。従来のCBTでは治療効果があがらない慢性的に症状を抱えるクライアントに対してCFTを適用し、30年以上にわたってその治療や研究を牽引している。
ジェームス・カービー博士
(James Kirby, Ph.D.)
オーストラリアのクイーンズランド大学の講師である。スタンフォード大学のC-CARE(Center for Compassion and Altruisum Research)の客員研究員で、イギリスのコンパッショネイト・マインド財団の名誉会員でもある。セルフ・コンパッションの先駆者であるクリスティーン・ネフの提唱したMindful Self-Compassion Program(MSCプログラム)やスタンフォード大学のCompassion Cultivating Trainingにも精通しており、幅広い視野で、コンパッションを研究・実践する若手のホープである。
★開催した日時
①1日コース 2019年3月21日(木・祝) 10:00~17:00
全国各地から、200名以上の方にお集まり頂きました。
②4日間コース 2019年3月21日(木・祝)~24日(日)
CFTの理論だけではなく、エクササイズも含まれており、体験的な学習でした。
★参加者の声
●今までに参加したワークショップの中で、これまでの臨床に大きく影響を及ぼすものとなりました。
●講師の先生方がコンパッションに満ちた雰囲気をお持ちで、CFTの理論だけではなく、エクササイズも豊富に含まれており、まったく飽きることなく、3日間が終わりました。
●企画者と運営スタッフの気配りに感動しました。心地よく受講できたのは、運営スタッフの皆さんのおかげです。
●幅広い知識、エビデンスに基づいた講義だった。お二人のジョークがとても面白く、退屈にならなかった。
●貴重な機会を有難うございました。ポールの温かさとジェームスの朗らかさ、とても心地の良い時間であったと思います。
●ポール先生もジェームス先生も声に表情があって、話を聴いているだけで気持ちが穏やかになったり、内容によっては悲しく、不安になったり、涙が出そうになったりと心が動く講演でした。
●お二人のコンパッショネイトでユーモアに溢れるお人柄や在り方に間近に触れることができたことは大きかったです。ありがとうございました。
●本ではなかなか学べない、生きた知恵をありがとうございました。
これまでの考え方を変える大きな衝撃がありました。
●通訳の技術力が大変高く、意味が通らないことがまったくなかったのが大変、満足できた理由として大きかったです。多くの事例があり、丁寧な解説もあり、とてもよく理解できました。
●直接的にすぐに自分のクライアントに使うのは難しくても、自分自身の人間観、臨床観が変わった気がします。それが間接的にクライアントにも伝わりそうで、楽しみにしています。
●濃密な時間でした。今後も、CFTを学んでいきたいと思っています。
●英訳のスキルの高さに驚いております。随時、適切な訳をして頂けて、本当に感謝しております。日本にいながら、ポール先生やジェームス先生の講義を拝聴でき、感謝しております。ありがとうございました。
●Compassionに対する先入観が払拭でき、理解を深めることができました。CFTは生理学、行動理論に根差しているという点で、精神科医師としても非常に親和性があり、CBTの適用が困難な事例にも有効だと思いました。